過去ログ-よりぬきサザ○さん

【虫】

簡単に書けば「虫を食べる人生」と「虫を食べない人生」に大別される。
人生についてそういう分け方も可能だということであって、この分類法において僕の人生は前者である。
ことさら自慢するような話ではないし、しても気味悪がられるだけなので、僕がそういう人生を歩んでいることについて、これまで人に話したことはない。
だから、結婚前の交際期間を含めても三年未満の妻はもとより、両親や姉ですら、我が夫または息子あるいは弟がよもやそんな人生を歩んでいようとは、露ほども知らぬはずだ。
僕自身は人と違うことをしている自分を後ろめたく感じたことはなくて、まあ割とこういう人は多いんじゃないかな、という程度に考えているし、実は妻や両親や姉も「虫を食べる人生」を選択している可能性は否定できない。
そもそも、蜂の子、ザザ虫、イナゴにカイコや九龍虫など、文明国においても虫食いは珍しいことではない。
どちらにしても、物を食べるということをあまり突き詰めて考えてしまっては楽しい人生は送れないし、食べたい物を食べたい時に適量食べる、ということが精神衛生上好ましいのではないだろうか。

何故唐突に僕が「虫を食う」ということについて書くのかといえば、最近、いわゆるゲテモノを様々に料理して食べるという趣旨の本を読んだのだが、そこに何種類かの虫の調理方法と、著者自身による味に対する感想が書かれていた。
それがどうも、僕がそれらを食べた際の思いと大きく異なっていて、どちらにしても味覚は主観的な要素が大きいから、そのゲテモノ本の著者が間違っているのだと言うつもりはないし、本の記述と比較してどうこう書くつもりもない。
ただ、僕はこうやって食べているということを書いておきたいと思っただけだ。

そのゲテモノ本では、虫を主に天麩羅のように揚げて食していた。
虫本来の味を損なわずに食べる方法としてはポピュラーであろう。
それは僕もよくやることだし、その本にも書かれてあるが、香り高い油でカラッと揚げてしまえば、大抵のものはそこそこ食べられるのだ。
油についての僕のお勧めは、「鬼山村八方搾り黒胡麻油」である。
僕の場合は、その虫天(虫の天麩羅のこと)に塩(ギリシア産の岩塩がお勧め)だけ振って食べることもあるのだが、やはり臭いが気になって好みに合わないものもある。
虫のよって強弱はあるが、雑食の虫は生ゴミのような臭いがするし、草食のはご想像のとおり青臭い。
そして、肉食の虫は獣臭いというのが面白いところだ。
特に臭いが強いのが、ゴキブリとかカメムシの類だ。
ゴキブリは幼生の頃から衛生管理をし、餌に注意すればまだ良いのだが、自然繁殖したものを食べることは拷問に近い。
あまりの臭さに僕でも必ず吐き出す。
カメムシに至っては、煮ても焼いても食えないヤツとは正にこいつのことだと思うほど臭い。
胡麻油で揚げればそれなりに食べられるカマキリも、手を抜いてサラダ油で揚げてしまうと、動物園のトラの檻の前にいるような臭いが鼻を突く。
しかし実は、そういう虫でも割と食べられるようになる必殺の技があるのだ。
注意しておきたいのは、この技を使ってもそう滅茶苦茶に虫がおいしいくなるわけではない。
食材としての虫自体がそう大して旨みを持ったものではないからだ。
だから、これを読んだ人が味に期待して試してみた挙句「なんじゃこりゃあ」ということになっても、僕の責任ではない。
「じゃあ、なんでおいしくもない虫なんか食うんだ」と言う人もいるかもしれないが、それについては「じゃあ、なんであんたはレタスなんか食うんだ」という返答をするに留めておく。
話を戻す。
その必殺の技とは「味噌漬け」である。
なぜか味噌と虫とは非常に相性が良いのだ。
前述の虫天を幾つか串に刺して、その上に味醂と酒を少量混ぜた味噌を塗り、田楽のようにして食べてもなかなかオツなのだが、やはり味噌漬けにはかなわない。
タッパーに腹を開いた虫を並べ、味噌5・味醂2・酒1・砂糖1・水1で作った味噌ダレをヒタヒタにする。
ちなみに味噌は「尾張甲斐田の八丁味噌DX」、味醂は「戸倉醸造本舗の元祖戸倉味醂」を使用している。
ここで注意すべきは、腹を開いても内臓はそのままにしておくということである。
内臓を取ってしまうと、食べるべきところはほとんど残らない。
そこにお好みで鷹の爪や切り胡麻などを振り、ラップを掛け冷蔵庫で半日ほど漬け込む。
漬け込んだら、内臓や脚などが外れてしまわないよう慎重に取り出し網の上で炙れば、味噌漬けの効果で外骨格のキチン質が柔らかくなり食べやすく、「これが虫か?」と思うほどの味である。
ただし、先に注意したように、豚の味噌漬けや鰆の味噌漬けに勝る味ではないからそのつもりで。
しかしながら、この調理法は恐らくあらゆる虫に有効な万能の決定打であり、ゴキブリやカメムシの恐るべき臭さも焦げた味噌ダレの香ばしい匂いで消し飛んでしまう。
ゲテモノ本では、どう調理しても不味くて食べられないと書かれていたカブトムシの幼虫も、この方法でなら食べられるのだ。
もっとも、幼虫の体内は土で占められているので、これを取り除くと皮膜しか残らないのだが、タレに漬け込んだ皮膜を網の上で転がしながら焦げ目が付く程度に炙って食べると、まるでホルモンのミノやテッチャンのような歯ごたえであり、なかなか面白い。
炙られて反り返った見た目も、まさにテッチャンである。
興味をそそられた方は、ぜひ一度手近な虫を採り、味噌漬けに挑戦していただきたい。

*鯖雄註:当然のことながら、虫だけを食べていると栄養が偏ります。
[PR]

  by savaoex | 2007-04-17 11:01 | その他

<< 過去ログ-よりぬきサザ○さん 過去ログ-よりぬきサザ○さん >>

SEM SKIN - DESIGN by SEM EXE